Synology
イミュータブルとは、英語で変更不能、不変を意味する言葉です。イミュータブルはプログラミングやITインフラの構築時に耳にしますが、それぞれどのような意味合いで使用されるのでしょうか。
本記事では、IT現場におけるイミュータブルの意味について紹介しています。
※本記事に掲載している情報は2024年3月時点のものです
目次
Synology
ストレージとソフトウェアが一体となった次世代ファイルサーバー
イミュータブルスナップショット機能でランサムウェアの攻撃からデータを保護します。
イミュータブルとは、英語で「変更不可能な」という意味を持つ形容詞で、ミュータブル「変更可能な」の対義語です。IT現場では、具体的にどのような意味で使用されるのかを以下で紹介します。
プログラミング分野のイミュータブルは、プログラム中に登場する変数や配列などのコレクション、オブジェクトが作成後に状態変更できないことをいいます。
プログラミングにおいて、データが変更されると、関連する他の部分で思わぬエラーが発生する可能性があります。しかし、イミュータブルなデータは変更が不可能なため、予期せぬエラーを未然に防ぐことができます。
インフラ構築時に利用されるイミュータブルには「イミュータブルインフラストラクチャ」「イミュータブルバックアップ(イミュータブルロック)」があります。
それぞれ解説していきます。
イミュータブルインフラストラクチャは、サーバー環境などのITインフラ構成法の一つです。一度構築した環境に手を入れずに変更が必要な場合は、変更済みの新しい環境を新たに構築して入れ替えます。
従来の方法で、稼働済みのシステムにソフトウェアのセキュリティを更新する場合、本番環境や開発環境に直接修正を行い、テスト確認を行っていました。
しかし、この方法では変更情報の管理などが必要となり、修正業務担当者の負担が大きいという問題がありました。
イミュータブルインフラでは、本番環境と開発環境の2つの環境を用意し、開発環境側でテストを実施します。テストや修正が十分に行われたあとに、本番環境と開発環境を入れ替え、それまで動かしていた旧本番環境は切り離します。
全体の再構築や切り替えは従来のIT環境では、コストがかかりすぎるため実現しにくい背景がありましたが、クラウドサービスの普及によって、低コストでの入れ替え、切り替えができるようになりました。
イミュータブルインフラとクラウドの掛け合わせによって、業務効率は格段に向上しています。
イミュータブルバックアップは、データを変更不可能にして削除や暗号化、変更を防ぎ、バックアップデータを保護する方法です。
イミュータブルなデータを確保することは、データの紛失や破損に備えて、データのコピーを常に回復可能な状態にしておくうえで大切なことです。
不変のバックアップデータがあれば、万が一のときも、データを失わずに済みます。
イミュータブルとミュータブルの違いは、ミュータブルは「変更が可能」な点です。
プログラミングでのミュータブルなデータは、プログラムの挙動が予測しづらいというデメリットがあります。また、データの変更後、それに依存する他の部分でエラーが発生する可能性があります。イミュータブルなデータは変更が不可能なため、このような減少を防ぐことができます。
インフラ構築の場面では、ミュータブルバックアップは簡単に暗号化や変更、削除ができるため、ランサムウェアなどのサイバー攻撃にさらされるデメリットがあります。
データ管理の観点において、なぜイミュータブルは必要とされるのでしょうか。
2つの活用現場から必要性を説明します。
プログラミング現場でのイミュータブルの必要性は、値変更の心配がない点、メモリを節約しながら変更履歴の管理ができる点の2つです。
イミューダブルに対応させていれば、オブジェクトを関数へ渡すときやメソッドの呼び出し時に変更が生じないため、変更された関数を探す時間を削減できます。
また、巨大な配列の変更履歴をとる際、イミューダブルに対応していると変更差分のみ保持し、残りは同じものを参照するという管理ができます。本来必要だったメモリを省略し、効率よく管理が可能となります。
ITインフラ構築現場ではイミュータブルの活用は欠かせません。特にイミュータブルバックアップによるデータの管理は非常に重要です。
例えば、ランサムウェアなどのサイバー攻撃によって、データが紛失・改変された場合、会社経営に大きな影響を与えます。
外部の脅威から大事なデータを守るには、バックアップ・リカバリーソリューションにイミュータブルシステムを導入して、変更不可能なバックアップ状態にする必要があります。
イミュータブルなバックアップデータが生成できれば、操作不可能なバージョンが常に回復できるようになり、さまざまな種類の脅威からデータを守ることができます。
IT現場においてイミュータブルの活用は非常に重要ですが、導入にあたっての課題もあります。
ここでは、イミュータブル導入の課題について解説します。
プログラミングでのイミュータブルの課題は、コードにイミュータブルを組み込むのに非常に労力がかかることです。配列とオブジェクトを大量にコピーする関係上、コードも長くなり、読みにくくなります。
そのため、プログラミングの現場においてイミュータブルを記載する場合、専用のライブラリを使い入力を行います。専用ライブラリがない場合の導入は、コードの埋め込みに時間がかかってしまう点がデメリットといえます。
ITインフラ構築の現場で活用されているイミュータブルストレージには、WORM(Write Once Read Many)機能とスナップショットの2つの機能があります。
WORM機能は、書き込みは1回限り、読み取りは何度でもできる記録方式です。主に改ざん防止機能として活用されます。
スナップショットは、ある時点でのデータ領域を写真に収めるようにイメージを保存する方式です。少ない容量でデータ保存できるメリットがあります。基本的には、スナップショットの保存先としてイミュータブルストレージを利用するのがおすすめとされています。
それぞれの方式の課題は、保存容量と外部からの攻撃への耐性です。
WORM機能は、一度しか書き込みできないため、ランサムウェアからの攻撃をクリアできます。しかし、データを変更のたびに新規保存を必要とするため、保存容量が大きくなってしまいます。
スナップショットで構成されているイミュータブルストレージは、容量を抑えることはできますが、書き込んだデータが攻撃にさらされるリスクがあります。
イミュータブルな環境の導入方法を現場ごとにご紹介します。
プログラミングでイミュータブルを実現する場合、その言語ごとのデータ型を埋め込むことで導入が可能となります。
また、言語によってはもともとイミュータブルな部分が多いものもあります。
具体的な例としてJavaScriptが挙げられます。JavaScriptのプリミティブ型(数値、文字列、ブール値、など)はすべてイミュータブルです。
ITインフラ構築時で重要なイミュータブルバックアップは、対応しているバックアップソフトウェアの購入やファイルサーバーの利用によって導入が可能です。
またランサムウェア対策として3-2-1ルールという、バックアップ方式を採用しているものを選ぶと、より対策効果が期待できます。
IT社会が隆盛を極める昨今、より企業のデータ管理は重要性を増しています。普段当たり前に活用しているデータのセキュリティのほとんどは、イミュータブルバックアップによって保全されています。
IT分野においてのイミュータブルバックアップは、近年増え続けるマルウェア対策に有効です。セキュリティ強化を課題として考える場合、イミュータブルの定義や働き、活用方法を知っておいて損はありません。本記事を参考に、基本的な概念だけでも抑えておきましょう。
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ストレージとソフトウェアが一体となった次世代ファイルサーバー
イミュータブルスナップショット機能でランサムウェアの攻撃からデータを保護します。