物品管理システム
減価償却を正しく行い、正確な会計情報を得て、固定資産税を把握するために「固定資産管理」は欠かせない業務です。しかし、社内に点在する固定資産すべてを徹底的に管理するとなると、紙やエクセルでの管理では業務に支障をきたす恐れがあります。
そこで導入を検討すべきなのが「固定資産管理システム」です。この記事では、固定資産管理システムとは何なのか?を中心に、固定資産管理システムの基礎知識をご紹介します。
※本記事に掲載している情報は2024年9月時点のものです。
目次
物品管理システム
簡単できめ細やかな台帳管理機能と豊富なアタッチメントで、
「何が」「今どこに」「どのような状態」をリアルタイムに把握。
さまざまな運用現場における管理のお悩みを解決します。
固定資産管理システムとは、企業が保有している固定資産の現物管理や減価償却、会計・税務上の計算などの処理を行うためのシステムです。一般的には次のような機能を備えています。
<固定資産管理システムの機能>
これらの機能は企業が保有している固定資産の総合的な台帳管理や、税務申告などを支援するためのものです。業界・業種ごとに提供されているソリューションの違いにより若干機能は異なりますが、多くの固定資産管理システムは上記の機能を標準的に備えています。
続いて、固定資産管理システムの分類をご紹介します。委託開発によってシステムをゼロから構築するケースを除けば、固定資産管理システムの分類は4つあります。
国内のシステム開発会社が提供するパッケージシステムを導入するタイプです。日本の税法・改正法に対応し、日本特有の商習慣に合わせた固定資産管理システムを提供するのが特徴となります。
一般的には中堅・大企業が導入し、企業ごとの要件を満たすために個別のカスタマイズを必要とするケースが多いでしょう。
また、最近ではインフラ設備をクラウド上に置き、オンラインで固定資産管理システムを利用できるようにするケースも増えています。
外資系企業が提供しているERP(統合基幹システム)に組み込まれた、サブシステムを利用するタイプです。導入するのはあくまでERPなので、固定資産管理システムに限らずさまざまな基幹システムを整えられます。
システム自体は日本語対応しているものがほとんどですが、細かい税法・改正法に対応できないケースもあります。その場合はシステムのカスタマイズを行うか、業務プロセスをシステム側に合わせなければいけません。
ただし、グローバル規模で共通システムを導入できるという利点があり、積極的に海外進出している企業には有効な選択肢となります。
個人事業主や中小企業向けに適用されているソフトウェアタイプの固定資産管理システムです。ライセンス買い切り型で、PCやサーバーにインストールするだけで利用できます。
カスタマイズ性は低いですが、個人事業主や中小企業が固定資産管理を行うための機能を網羅している製品が多いでしょう。
また、最近ではSaaSによるサービス提供も人気を集めています。ソフトウェアを購入する必要がなく、初期コストを抑えられるうえにシステムの保守・運用負担がないため、IT人材がいない・少ない企業でも安定したシステムを利用できます。
棚卸や現物管理を中心としたシステムであり、減価償却などの機能を省いたタイプのシステムです。厳密に言えば固定資産管理システムではありませんが、安価に導入できることから棚卸・現物管理のみをシステム上で行い、減価償却などは手作業で行うというスタイルが取れます。
また、経理システムとの連携も可能なので、システムを個別に導入し、連携させることで全体的なコストを抑えられる可能性があります。
ここでは固定資産管理を怠ると生じることを解説します。
事前に把握することで予期せぬ事態が生じてしまわないように気をつけましょう。
固定資産管理を怠ると、ガバナンスが低下する可能性があります。
状況を正確に把握できていない資産や、所在が不明な資産が生じると、不正使用や盗難のリスクが高まるためです。また、正確な資産情報が不足すると財務報告の信頼性が損なわれ、会社の経営状態や健全性の判断に必要なデータが集まらないこともあります。
このような事態に陥ると外部監査や規制への対応が難しくなり、ガバナンス全体や企業の評判が悪化する可能性があります。
固定資産管理を怠ると、減価償却の計算に滞りが生じる可能性があります。
資産の取得日や価値、耐用年数などの資産の状況を示す情報が不正確だと、最悪の場合、減価償却費の計算を誤り、財務諸表といった重要な情報が不正確になってしまうリスクが高まります。
また、このような状況では税務申告や法規制の順守にも影響を及ぼし、追加の監査や罰則を招いてしまう可能性も危惧されるでしょう。
正確な固定資産管理を行い減価償却計算の正確性を確保し、財務の透明性を保つことが重要です。
固定資産が適切に管理されていないと、資産の状態、評価額などの情報が不明確になり、固定資産税の算出に必要なデータが不足することがあります。
固定資産税を正確に把握ができていない場合は、未払いの税金や予期せぬ修繕などで想定外の支出が発生するリスクが高まります。特に固定資産税の把握がずさんだと、税務当局からの指摘や調査に対して、適切に対応できず罰則や追徴課税が発生してしまう恐れもあります。
このような事態を避けるためには、リアルタイムな固定資産管理が重要です。
固定資産管理システムが備えている一般的な機能についてはすでに解説しましたが、ここでは基本機能をさらに詳しくご紹介していきます。
固定資産管理システムでは固定資産情報を全体的に管理する機能が中心となります。現物ベースで管理できる機能は、企業内の固定資産管理システムを正しく把握・管理するのに便利な機能です。
一部のシステムはデータベース上で管理するだけでなく、RFID(無線タグ)とハンディターミナルを使用して正確な現物ベースの管理を可能としています。こうしたシステムを導入すると、機械設備などの大型固定資産に限らず、工具など小型固定資産が「今どこに、どれくらいあるのか?」を正しく管理できるようになります。
一口に減価償却と言っても、定額法・定率法・均等法による計算方法や、増加償却、特別償却といった複数の償却方法があります。固定資産管理システムはこれら複数の減価償却方法に対応しており、固定資産に合わせた正しい減価償却が可能です。
また、資産除去債務などの計算も行えます。資産除去債務とは、固定資産を取得した段階で将来的にかかる廃棄·撤去·改修などの費用を、一定の割引率に従って現在の価格に計算したうえで、減価償却費として計上する債務のことです。
固定資産管理システムにはセキュリティ管理も欠かせません。一般的なセキュリティ管理機能としては、ユーザーごとのアクセス権限設定があります。システムを利用するユーザーごとに権限を設定すれば、システムへの不要なアクセスを防ぎ、操作ミスや内部不正によるセキュリティリスクを低減できます。
ログ管理機能を備えているシステムもあります。不正操作などはログを監視することで確認できるため、内部不正の発覚、あるいは外部からの不正アクセスにも気付けます。
固定資産管理システムだけではさまざまな会計・税務処理に対応できないため、会計ソフトとの連携を提供している場合がほとんどです。固定資産やリース資産の仕訳情報を連携し、償却資産税の申告などをスムーズに行えるようになります。
ERPとして導入する場合は、固定資産システムと会計システムがすでに連携されています。また、個人事業主や中小企業向けの会計パッケージソフトには、簡易的な減価償却機能が備わっているケースもあります。
それでは、固定資産管理システムを導入する5つのメリットをご紹介します。それぞれ詳しく解説しますので、固定資産管理システムの有用性を感じていただければ幸いです。
固定資産管理システムを導入すれば、社内の固定資産を一元管理できます。もちろん、紙やエクセルで一元管理はできますが、固定資産管理システムなら細かい情報まで気軽に管理でき、情報の更新性が高くなるためいつでも正確に固定資産状況を把握できるのが大きなメリットです。
固定資産管理システムなら、固定資産だけでなくリース資産の管理も可能です。リース契約には減価償却するパターンとしないパターンがあり、「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」の場合は減価償却が必要です。これらは実際の資産価額に応じた支払いをしながらリース資産を利用するため、固定資産と同じ扱いになります。
減価償却を正確に行うことは、会計・税務上とても大切なことです。決算報告や税務申告において間違った数値を報告・申告してしまわないよう、丁寧に計算する必要があります。とはいえ、手作業の減価償却計算はミスが起こりがちです。固定資産管理システムなら資産情報や設定に従って自動的に計算されるのでミスがありません。
どこにどれくらいの固定資産が管理されているのかを知ることで、企業のキャッシュフロー把握に役立ちます。また、不要な固定資産を特定し、排除する節税にもなるため、これからの経営投資を判断するための材料にもなるでしょう。
IFRS(国際会計基準・国際財務報告基準)への対応は容易ではありませんが、IFRS対応の固定資産管理システムにより、対応が可能になります。上場企業は海外投資家に対するアピールになり、グローバル企業では国内外子会社の会計基準を統一できるため業務効率のアップにもつながります。
固定資産管理システムは、製品ごとにさまざまな特徴があります。機能・性能・価格・連携性など製品ごとの違いを理解し、適切なシステムを導入しなければいけません。ここでは固定資産管理システムの選び方をご紹介します。
固定資産管理という業務は、それ自体で完結するものではありません。棚卸や会計処理、税務報告など部門横断的プロセスになるため、まずは固定資産管理に必要な業務プロセスを整理することが大切です。
固定資産管理を中心としたマインドマップのように業務プロセスを整理していくと、各業務のつながりなどを把握できます。そのうえでパッケージとしての固定資産管理システムが必要なのか、ERPのサブシステムとして必要なのかなどの指針が明確になっていきます。
RFIDに対応している固定資産管理システムなら、小型の固定資産も正確に管理できるようになります。また、RFIDに対応していると商品在庫の棚卸にも活用できるため、システム利用の幅が広がります。
ちなみにRFIDを活用するメリットは、ハンディターミナルを使って遠隔でタグを読み込めるため、固定資産の把握や在庫棚卸などにかかる時間が大幅に短縮できる点です。点検ミスも発生しづらいため、業務の正確性もアップします。
会計ソフトやエクセルを使って固定資産管理を行っている企業の場合は、CSVファイル等でのデータ移行が可能かどうかを確認しましょう。もし移行できないとなると、固定資産情報をゼロから登録しなければならず、膨大な労力が要ります。
また、会計システムを利用している場合は同システムと固定資産管理システムが連携できれば、データ移行だけでなく会計処理との連携も可能になります。
その他のシステムとの連携性についても確認しておきましょう。たとえば、コミュニケーションツールとの連携が取れると、固定資産管理における情報共有をツール上で行えるためコミュニケーション効率がアップします。
固定資産管理システムは運用状況によってさまざまなシステムとの連携が必要になるため、連携用のAPIを提供しているかなども確認しておくべき項目の1つです。
法人税法などの法律に依存する固定資産管理は、法改正によって業務プロセスが変化することがあります。そのため、固定資産管理システムにも法改正に対応できる柔軟性が欠かせません。法改正に応じてシステムはアップデートされるのか、追加料金は発生するのかなどを事前に確認しておきましょう。
また、セキュリティ対策のアップデートも定期的に実施されるか確認してください。システムにはセキュリティの脆弱性が隠れていることがあります。サイバー攻撃の対象にならないためにも、開発元が定期的なアップデートを実施しているか否かは大切な確認事項です。
残念ながら、固定資産管理システムの導入に失敗するケースもあります。多くの場合、次の3つの失敗パターンのいずれかに当てはまるため、パターンを把握して失敗しないシステム導入をめざしましょう。
多くの固定資産管理システムは法改正に対応していますが、一部のシステムは対応していない場合があります。法改正に対応できないシステムの場合、独自に改修するか、カスタマイズを他のシステム会社に依頼しなければいけません。
どちらも多額のシステム改修費がかかるため、想定以上の運用コストがかかります。また、自社や他のシステム会社が固定資産管理システムに手を加えると、その後のアップデートに対応できなくなるかもしれないので注意しましょう。
セキュリティアップデートにも対応できず、リスクを残したまま運用し続けているケースも少なくありません。
データ移行に対応している固定資産管理システムであっても、実際にデータを移行するときにエラーが発生することもあります。現行システムからのデータ移行が行えないと、一部または全部のデータを手作業で移行しなければいけないため、相当の手間と労力がかかります。
固定資産管理システムを導入する際は、可能であればトライアルなどを実施してデータ移行が問題なく行えるかどうかを事前チェックしましょう。その点はシステム会社の開発担当者と相談しながら導入を進めることで、リスクを最小限にとどめられます。
前述のように、固定資産管理という業務はそれだけで完結するわけではありません。その他さまざまな業務と関連し、大きな1つの業務プロセスを作っています。つまり、固定資産管理とはあくまでその一部なのです。
そのため固定資産管理システムの連携性が弱いと、他システムとの連携ができず、組織全体での業務効率化を阻害する原因になり得ます。一度導入したシステムの入れ替えは容易ではないので、連携性についても事前に確認することが大切です。
自社の有する固定資産は企業や組織の規模や業種によってさまざまなのではないでしょうか。
機能の取捨選択ができないシステムを選んでしまうと、「オーバースペックで使わない機能ばかり」「管理したい情報に対して機能が不十分」といった事態が起こることがあります。このような状況下だと費用対効果に満足できなくなってしまう場合があります。
特に、必要な機能が不足している場合は資産の正確な把握ができなくなってしまい、税金の申告や財務諸表といった重要な情報に影響を及ぼしてしまうこともあります。
そのため、自社の要望や課題に対してカスタマイズのできるシステムを検討するとよいでしょう。
正確かつ迅速な固定資産管理を実現するのであれば、RFIDを活用したシステムをおすすめします。特に、保有している固定資産が多岐に渡る場合は、物品管理を行うにあたってさまざまな管理ミスが想定されます。
一方、RFIDを活用すればどこに、どのような固定資産が管理されているかを素早く把握でき、ミスも起こりづらいです。また、システムへの入力も手作業ではなく、自動での取り込みになるため業務効率化も促進できます。
何を目的とするか、どこに主眼を置くかによって適切な固定資産管理システムは異なります。そのため、まずは固定資産管理システムを導入する目的を明確にしましょう。
先述したとおり、固定資産管理は大きな業務プロセスの一部です。固定資産管理の効率化以外にも目的がないかなどを整理し、社内システム全体を考慮した固定資産管理システムの導入をめざしていただければと思います。
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※その他、記載されている会社名、製品名は、各社の登録商標または商標です。
簡単できめ細やかな台帳管理機能と豊富なアタッチメントで、
「何が」「今どこに」「どのような状態」をリアルタイムに把握。
さまざまな運用現場における管理のお悩みを解決します。