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近年、SBOM(エスボム)が新たなセキュリティ対策の手段として注目されています。しかし、「名前を聞いたことはあるものの、何が重要なのかわからない」という方もいるのではないでしょうか。そこで、この記事ではSBOMが注目されている背景や、導入する手順、活用するメリットや注意点について詳しく解説します。
※本記事に掲載している情報は2024年9月時点のものです。
目次
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システム構成要素の管理・継続的なセキュリティ対応で
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SBOMとは、ソフトウェア部品表(Software Bill of Materials)の略で、ソフトウェア製品に含まれるすべての構成要素とそれぞれの依存関係をリスト化したものです。
なぜSBOMが注目されているかというと、近年はソフトウェアの管理や運用が複雑化していることが挙げられます。
SBOMは、ソフトウェアに含まれる構成要素や部品と、それぞれの依存関係をリストアップします。
そのため、SBOMを実施することで特定の構成要素に脆弱性が発見された場合に、どの部分が問題かを即座に把握でき、迅速かつ効率的に脆弱性を除去し、ソフトウェアの安全性を高めることができるのです。
SBOMは、ソフトウェア開発のプロセス全体にわたって、ソフトウェアが適切に利用されているかを把握・管理する「ソフトウェア管理」や法令や規則を順守し、企業活動を適正に進めることである「コンプライアンス」の確保にも役立ちます。
SBOM(ソフトウェア部品表)に対する注目が高まっている背景には、2021年に米国でサイバーセキュリティに関する大統領令※が発表されたことが大きな要因として挙げられます。
この米国大統領令は、2021年に「国家のサイバーセキュリティの改善」を目的として、軍も含む行政機関に対して発令されました。
アメリカ政府全体のサイバーセキュリティ対策を強化するため、「クラウドサービスのセキュリティ強化」、「サイバーインシデントの情報共有」などが義務付けられました。
この命令が下された背景には、近年のアメリカ政府が国家規模でサイバー攻撃やサイバーテロを受け続けていることが挙げられます。
ソフトウェアが開発され実際に利用されるまでのプロセスを「サプライチェーン」と呼びますが、これまでサプライチェーンに対する攻撃が目立っていました。
そこで、サプライチェーンの脆弱性対策として大統領令で、SBOMの利用が推奨されることとなったのです。
これまで、サプライチェーンでは透明性や悪意のある攻撃に対する適切な管理が欠如していることがありました。
そのため、アメリカの行政機関だけでなく世界中のあらゆる機関や企業において、サプライチェーンに対する攻撃に迅速な対策を行う手段としてSBOMが注目されるようになっているのです。
ここでは、SBOMを導入することで得られるメリットについて詳しく解説します。
SBOMの導入は、ソフトウェアの開発に至るまでのプロセスの全体を改善することができる場合があります。
SBOMではソフトウェアのすべての構成要素とその依存関係をリストアップするため、開発者はどの部品がどのように相互作用しているかを一目で把握できるようになります。
そのため、開発段階での無駄な相互作用チェックの確認などを削減することができます。
また、類似した関係性を見つけることで、コードの再利用を効率的に行うこともできるようになるでしょう。
さらに、問題が発生した場合にも、原因を迅速に特定できるため、トラブルシューティングも容易になりますし、他チームから引き継いだ際も一目で行うべき指針を立てることができるようになります。
このような点からSBOMの導入によって、開発速度の向上やリリースサイクルの短縮が期待されます。
SBOMの導入は、ソフトウェア品質の向上に直結します。
この背景として、SBOMを作成することで、無償でだれでも改変などが可能なソフトウェアであるOSS(オープンソースソフトウェア)の発見が簡単になるからです。
OSSは開発のコストを抑えられる利点もある一方で、脆弱性が見つかった場合はサイバー攻撃を受けるリスクがあります。
つまり、SBOMを作成してOSSの発見が簡単になると、攻撃を受ける前に脆弱性に気付く可能性が高まります。結果として、攻撃を受ける前にセキュリティ対策を行うことができ、被害を抑えることができるでしょう。
被害を受けると復旧までの時間がかかり、当然その分ソフトウェアの開発が遅れ品質悪化につながる可能性があります。
反対に、SBOMを導入していればサイバー攻撃の被害に合う可能性が減り、被害の対応などに時間を割かないため質の高い開発が可能になるでしょう。
コンプライアンスの順守は、現代のソフトウェア開発において不可欠な要素といえるでしょう。
SBOMでは、使用されているすべてのソフトウェアの構成要素のライセンス情報を管理する場合もあります。
そうすることで、どのOSSがどのライセンス条件で提供されているかなどを一目で把握できるようになります。
そのため、もしソフトウェアを構成している要素の法的要件や規制が改定された場合でも、迅速に修正を行いやすくコンプライアンス順守の徹底に役立ちます。
このようにSBOMの導入は法的リスクを軽減し、企業の信頼や、果ては企業価値を高めることもできます。
SBOMは、ソフトウェアの脆弱性管理において非常に有用です。
詳細なSBOMのリストを持つことで、特定の脆弱性が発見された場合、その脆弱性を含む箇所を迅速に特定し、必要な修正やアップデートを行うことができます。
また、SBOMはセキュリティスキャンツールと連携することで、リアルタイムで脆弱性を検出し、早期に対応することが可能になります。
OSSを使用した開発を行っている場合など、脆弱性が懸念される場合はSBOMだけでなくセキュリティスキャンも行える体制で業務を進めることがベストといえるでしょう。
SBOMの導入は、企業のサイバーレジリエンスを向上させることもできます。
サイバーレジリエンスとは、企業のシステムやサービスがサイバー攻撃を受け、業務や運用ができなくなってしまった場合に復旧する能力の高さのことです。
サイバー攻撃が発生した場合であってもSBOMが存在すれば影響を受けた範囲を特定し、迅速に復旧を含めた対応をとることが可能です。
また、第二波、第三波といった追加の波状攻撃が想定される場合であっても、次に攻撃が想定される箇所を判別しやすくなるメリットも考えられるでしょう。
こうした点から、サプライチェーンに対する攻撃が増加している現代において、SBOMの存在は非常に大きなものになるでしょう。
また、リモートワークや働き方改革を背景としたライフスタイルの変化により、社内と社外の境界は不明瞭になっています。
そのため、近年では攻撃のきっかけが社内であるとは限らず、社内外の区別をせずに対策を行う「ゼロトラストセキュリティ」という考え方が浸透しています。
この考え方はSBOMの導入とともに重要性が叫ばれているため、互いに補完できるように意識しましょう。
SBOMは、セキュリティ対策やガバナンス強化に非常に有効ですが、導入にはいくつかの注意点があります。
そこで、ここではSBOMの導入時に注意すべき点について解説します。
SBOMの導入において最も重要なのは、正確性です。
ソフトウェアの構成要素と依存関係が明瞭であれば、潜在的な脆弱性やセキュリティリスクを適切に管理できます。
しかし、正確かつ実際の状況を反映できていなければ活用は難しいでしょう。
常に正確に情報を把握するためには、すべての構成要素をリアルタイムに完全なリストとして把握する必要があります。
これは、特に大規模なプロジェクトや複雑な依存関係を持つソフトウェアにおいて、非常に難しい業務となります。
そのため、自動でSBOM生成が可能なツールの導入などを検討するとよいでしょう。
ソフトウェアやその依存関係は頻繁に変更されるため、SBOMも同様に頻繁に更新する必要があります。
古いSBOMは最新のセキュリティ情報を反映していない場合があり、これがセキュリティ上のリスクを生む原因となる場合があります。
また、SBOMを手動で更新するのは非常に手間がかかるため、自動化の検討がおすすめです。
自動化ツールを使用することで、常に最新のSBOMを維持し、セキュリティリスクを最小限に抑えることができます。
SBOMを導入する流れについて解説します。
事前に流れを知り、導入の際に必要になるものや気をつけておくべきことを把握できるようにしましょう。
SBOMを導入する際には、導入することによって実現したい目的を明確にすることが重要です。
SBOM導入の目的として一般的なものは「セキュリティ管理の強化」「コンプライアンスの順守」「レジリエンスの強化」などが挙げられます。
実際の導入にあたっては自社で何を優先にしているかを把握するようにしましょう。
また、この工程で提起する目的は課題の裏返しと捉えることもできます。
そのため、目的をうまく見つけられない場合は、現在、自社の抱えている課題を優先するとよいでしょう。
SBOMに含まれるすべてのソフトウェアの構成要素とその依存関係をリストアップします。
これには、内部開発のコードだけでなく、使用しているOSSなども含まれます。
また、各要素のバージョン情報やライセンス情報も逐次、詳細に記録することが重要です。
列挙したSBOMを一元的に管理するための仕組みを構築します。
SBOMの一元管理は、情報の正確性と再現性を保つために不可欠です。
これを実現するためには、適切なツールやプラットフォームを導入し、ソフトウェアの変更が発生するたびにSBOMを自動更新するシステムを整備することがおすすめです。
一元管理をすることで開発者だけでなく、ユーザーなどの利用に関わる関係者までが最新の情報にアクセスできるようになり、迅速な対応が可能となるでしょう。
SBOMの導入はセキュリティ対策やコンプライアンス順守において非常に重要です。
また、レジリエンスなど、近年、企業経営の健全性や堅ろう性において注目されている分野にも通ずるメリットが存在する取り組みです。
ただし、こうしたメリットを享受するためには、具体的な手順や注意事項を把握しておく必要があります。
特に脆弱性の発見という目的において効果を発揮するSBOMですが、最大限の効果を発揮するためにはリアルタイムな更新が欠かせません。
これを手作業で行うことは非常に骨の折れることであり、属人化やヒューマンエラーによる抜け漏れが生じてしまうリスクがあります。
効率的なセキュリティ対策として始めたはずが、業務の負担を増やし、かえってヒューマンエラーによる脆弱性を誘発するようになってしまうと本末転倒です。
そのため、SBOMを自動生成できる仕組みを選ぶことがおすすめです。
特に、IDE、CI/CDツールといった多種多様な開発ツールや、レポジトリ・ワークフローの統合も検討されている場合は、日立システムズエンジニアリングサービスの「ソフトウェア脆弱性対策支援サービス Snyk(スニーク)」がお勧めです。
依存関係にあるオープンソースソフトウェアの脆弱性を解析する機能や、コンテナイメージ内の脆弱性を検知する機能も搭載されています。
Snykにご興味のある方は、ぜひ以下よりサービスの詳細をご覧ください。
https://www.hitachi-systems-es.co.jp/lp/snyk/
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