日立システムズエンジニアリングサービスEXPO 2025
株式会社日立システムズフィールドサービス
サービス事業推進本部GX事業推進部 課長
懸川 真樹 氏
講演の冒頭、懸川氏は日立システムズフィールドサービスの概要ならびに提供サービスについて紹介。脱炭素という複雑な課題に対して、同社が実効性のあるサポートを提供できる背景には強固なインフラが存在することを説明した。
懸川氏「当社は、保守・運用サービス、ファシリティサービス、ネットワークサービス、ビジネスサポートサービスという4つの主要サービスを連携することにより、ワンストップで高品質なサービスを提供しています。また、全国に148の拠点を展開し、日立システムズグループ全体で約300拠点の体制でサービス提供を行っています。さらに、建設業や電気工事などの幅広い許認可を持ち、専門性の高い業務にも対応しているのが強みです。」
さらに、「脱炭素に向けた取り組みには、人への投資も非常に重要だと考えています。」と懸川氏は続ける。
懸川氏「当社は、社員3,000名のスキルアップを支援しており、業務に関連する幅広い資格取得を推奨しています。現場作業に関連する資格のほか、今回お話しする脱炭素経営を支える専門資格『炭素会計アドバイザー』の取得にも力を入れています。」
続いて、懸川氏は、カーボンニュートラルということばが定着するなかで、日本が直面している具体的な数値目標と現状について次のように触れた。
懸川氏「日本政府は2050年までのカーボンニュートラル達成ならびに2030年度までに温室効果ガス排出量(GHG)を46%削減することを宣言しています。この目標に向け、いま大手企業を中心に大きな変化が起きています。」
現在、大手企業では自社での燃料消費や電気使用によるGHG排出量(Scope1,2)に加え、取引先も含めたサプライチェーン全体の排出量、いわゆるScope3の算定と削減が要求されている。
懸川氏「大手企業はサプライヤーに対し、排出量の可視化や目標設定、削減の要請に加え、脱炭素の支援も始めています。なかには、重要なサプライヤーに対して第三者への報告を義務づける会社も現れています。」
しかし、懸川氏はこの動きを企業に負担を強いるだけのものではないとして、脱炭素経営に取り組む企業へのインセンティブについても説明した。
懸川氏「金融機関による『サステナビリティ・リンク・ローン』のように、脱炭素の目標達成状況に応じて融資条件が優遇される仕組みも普及しています。2025年の9月時点で約2,500件もの融資実績報告が確認されているなど、銀行や政府も企業の取り組みを強く支援しています。」
脱炭素化はリスク対応ではなく、企業価値を高め、新たな資金調達や取引機会を得るための投資へと変化しているとのこと。
懸川氏「日立システムズグループとしても脱炭素化社会をめざすために、電力使用量の把握や省エネ活動、設備の更新を進めています。なかでも多く所有している社用車を2030年までに100%EV化するという目標を掲げて推進しております。」
脱炭素化に向けた取り組みについて、懸川氏は環境省が推奨する「知る」「測る」「減らす」の3つのステップを例に同社のソリューションを紹介。
懸川氏「当社ではこれまで、EV充電器の設置や遮熱塗料の塗布、LED工事など現地作業を伴う『減らす』ソリューションを中心に展開してきました。しかし、お客さまのカーボンニュートラル全体を支援するためには、どれだけGHGを排出しているかを正確に捉える『知る』『測る』という領域にサービスを拡大する必要があると感じるようになりました。」
「減らす」だけではなく、「知る」「測る」といったステップがカーボンニュートラルソリューションには重要として、同社ではGHG排出量の算定支援から削減実行までをワンストップでサポートする体制を強化。その具体例として、懸川氏は規模の異なる2つの事例を紹介した。
最初に紹介した事例は、株式会社清水製作所様(金属加工業)のケース。清水製作所様は、今後の大手企業との取引に備えて、自社のGHG排出量算定に加え国際的な指標である「SBT(Science Based Targets)認定」の取得をめざしていたが、2つの大きな壁に直面した。
1点目は、GHG算定に必要な情報の集め方や手順が分からないこと。これに対し、推進方法の検討から支援を開始。
懸川氏「まずは勉強会を開催し、どのようなデータを集めるべきかを検討し、必要データの洗い出しから始めました。その後、ガソリン、ガス、電気といった各拠点の活動データを収集し、環境省の定めるカテゴリーに沿って当社で算定表を作成しました。」
これらの作業は2024年5月から8月までの約4カ月間をかけて可視化を完了。
2点目は、SBT認定のための申請手続きの進め方が分からないこと。申請は第三者機関であるSBTiが運営する専用サイトで行われる。そのため、英語サイトの認定取得申請フォーム入力支援に加え、実効性のある削減目標設定のアドバイスも実施。
懸川氏「SBT認定を取得すると、国土交通省の脱炭素型公共事業での加点評価や、ものづくり補助金の申請要件合致など、ビジネス上の直接的なメリットが得られます。申請費用の支払いから審査後の認定証発行まで、2024年10月から翌年3月までの約6カ月間にわたり伴走しました。」
次に紹介した事例は、国内に2万もの拠点を構える大規模企業での課題を解決したもの。拠点数があまりにも多く、自社でデータを収集して入力作業を行うことが物理的に難しいという悩みを抱えていた。
懸川氏「こちらの企業さまでは算定に向けた方針が整っていたものの、GHGの情報が膨大で自社で入力作業を行うのが物理的に難しいという課題を抱えていました。そこで当社では、日立グループが長年培ってきた事務作業のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)体制を生かし、算定した環境データの入力代行サービスを提供しています。」
全国2万の拠点から発生する電気、ガス、水道などの明細情報を同社のセンターで一括して受け取りデータ化を進め、テクノロジーと人の目が組み合わされた高度なプロセスが採用されている。
懸川氏「はじめにAI-OCRなどを利用して、各拠点から出る膨大な電気・ガスなどの明細情報をデータ化しました。また、そのデータをただ取り込むのではなく、前年度のデータと比較して大きなかい離がないかをチェックする品質管理を重要項目と捉え、実行しました。例えば、昨年の数値が1,000だった箇所が今年7,000になっているような場合は、入力ミスやデータ自体に誤りがあるかもしれません。こうした異常値を検知した際には、必ず社員自身が再確認を行ってデータ化を進めました。」
精査され、信頼性が担保されたデータは、日立製のGHG排出量可視化プラットフォーム「EcoAssist(エコアシスト)」へインポートされる。これにより、お客さまは社外公開へ向けて高精度のGHGデータを利用することが可能となる。
中小企業向けには、グラフで直感的に排出量を把握できる「EcoNiPass(エコニパス)」というプラットフォームも提供している。円グラフや棒グラフでどの分野がGHGを多く排出しているかを可視化することにより、削減すべき項目を明確に把握することができるため、企業の規模に合わせた柔軟な提案が可能だと懸川氏は事例のなかで紹介。
講演の終盤、懸川氏は算定後の利用についても強調した。
懸川氏「GHG排出量を可視化すると、何を減らすべきかが明確になります。あるお客さまでは、排出量の7割が高圧電力であることを突き止め、製造ラインの設備更新や太陽光発電の導入を決断されました。また、クランプ式の電力センサーを個別の機械に設置し、使用電力を時間ごとに可視化することができるサービスを日立システムズエンジニアリングサービスが提供しています。機器ごとの電力使用量や正味稼働時間ならびに総待機時間を把握することによって、稼働していない時間帯の電源を切るなどエネルギーコストの削減=排出量の削減が可能です。このように、お客さまのお困りごとや課題に合わせた解決策をグループ全体で検討しサポートいたします。」
算定はあくまでスタートラインに過ぎず、同社がめざすのは算定(Plan)から削減施策の実行(Do)、再算定による効果検証(Check)、そして計画の見直し(Action)という、PDCAサイクルのトータルサポート。
懸川氏「本日ご紹介したソリューションは、皆さまの会社への導入のみならず、その先のお客さまへ向けた拡販ツールとしてもご利用いただけます。戦略検討から同行支援まで、日立システムズエンジニアリングサービスと一体となって脱炭素施策検討を推進させていただきます。」
日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラル目標に向けて、大手企業だけでなく中堅中小企業も含めた脱炭素化が求められている。最後に懸川氏は「排出量を「知る」「測る」ことで自社の立ち位置を明確にしたうえで、PDCAサイクルを回すことが重要」と締めくくった。
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